【文字起こし】#001 「OASIS」について語る【CULATIVE RADO 手前のカルチャー】

【文字起こし】#001 「OASIS」について語る【CULATIVE RADO 手前のカルチャー】


オープニング

CULATIVE編集室 はっしーこと橋本拓哉(以下、は)
上水優輝(以下、上)

は)始まりました。CULATIVE RADIO「手前のカルチャー」。CULATIVE編集室のはっしーこと橋本拓哉です。

上)カルチャーの手前でそっと佇んでいます。上水優輝です。

は)はい。というわけで始まりました、CULATIVEのポッドキャストですね。この番組は、映画・音楽・アニメ・マンガなど「カルチャーをもっと知りたいけど、どこから触れればいいかわからない」というような方へ向けて、カルチャーをもっと身近に感じるための入り口の手前までご案内していく番組です。

は)というわけで、第1回目ですかね。

上)始まりましたね。どうですか?  緊張してないですか?

は)多少の緊張はありますけど、お酒の力を借りて。(笑)

上)お酒飲みながらやっていく番組なんですかね。

は)だらだらトークしていくっていう感じですけどね。で、第1回目のテーマなんですけど、今年これを語らずにはいられないだろうということで、Oasisについて。ロックバンドOasis。

は)上水さんはOasisについてはどうですか?

上)はい。

は)バンド活動してたらある程度Oasisは通っているんじゃないかなと思うんですけど。

上)そう思うでしょう。僕が知ってるOasis、情報を一旦言っていきますね。

は)はいはい。

上)僕が知っているOasis。兄弟がいる。リアム・ギャラガーとノエル・ギャラガーがいる。他のメンバーが誰なのかわかってないですね。何人のバンドなのかも分かってない。4人なのか5人なのか…多分6人はいないと思うけど、4人か5人ぐらいだろうと思っている。あとは兄弟二人の写真が並べられたときに、どっちがどっちかわからない。あとはイギリスのバンドであるってこと。UKといえば、みたいなイメージはあるし。あとは今年ずっと「Don’t なんちゃら Anger」が叩かれているな、っていう印象。正直以上って感じです。

は)通らなかったっていうことですね。

上)高校生の時にCDをレンタルするみたいな時代だったんですよ。僕の時代はまだ。1枚だけアルバムを借りて、みたいな。でもそれが何だったかも覚えてない。1回1枚聴いて、あまり自分には合わないなと思って素通りしちゃったまま、今に至るって感じなんですよ。

は)かなり手前の方に。(笑)

は)そういう視聴者の方もいっぱいいるでしょうから。

上)そうです。

上)Oasisを解説してる人ってたくさんいると思うんですけど、やっぱりその波に乗り遅れた人、たくさんいると思うんですよ。知らないの恥ずかしいから乗っかって「知ってる」フリしてた人がいっぱいいると思うんで。これを機にね、知ってもらえるといいんじゃないですか。

は)自分はライブに行ったんですけど、そのライブの時にこのポッドキャストを始めよう、という話になります。そうですね。

上)東京ドームのライブですよね。

は)今年はOasis1色と言っていいほど、ずっとラジオとかでも流れているし。「再結成した」っていうのがどれだけすごいことなのか、みたいなところを、たぶん分からずに来ているお客さんもいっぱいいたと思うんですよ。

上)そうなんだ、それも知ってた。めっちゃ仲悪くて、喧嘩があって、みたいなのは当時から有名でしたよね。

は)そう、喧嘩しがちな兄弟で、結果喧嘩別れをして。で、今回仲直りをして再結成、ということに至ったんですけど。

OASISと自分

は)では自分、橋本はどのぐらいOasis好きなんだ?と。

上)そうだね。

は)ライブに行くぐらいは好きなんですけれども。

は)自分とOasisの出会いのところから話していくと。中学・高校時代…当時たぶん『BECK』とかでOasisが取り上げられてて。BECKの主人公の歌い方とかも、Oasisのリアム・ギャラガーと同じような感じで。

上)ちょっと待って、BECKってそんな時代だったっけ?

は)そうですね。後ろで手を組んで、マイクの前で仁王立ちして歌うみたいな方法がすごいアイコニックで。その漫画を読んでOasisに興味を持って。当時、洋楽の入門としてもう既に確立されていて、「とりあえず聴いとけ」みたいな感じだったので、自分もレンタルとかで聴いたと思うんですけど。ただ当時の自分にはあまりピンと来てなかったんです。

上)うん。

は)その頃にはSUM41とか、もうちょい後の激しめ…ラウド寄りのロックとかが流行ってたし。個人的にもマリリン・マンソンとかにハマってた。こう、日本で言うとナンバーガール、ミッシェルとかに夢中だったので、Oasisのキャッチーなメロディーにあんまりロックを感じてなかったです。

上)わかる。高校生の時そんな感じがして素通りしちゃった。

は)とはいえ、Mステ出た時とか話題になってたし、ギャラガー兄弟の過激な発言は、発言自体を面白がる、みたいな。音楽そのものに対しては、あんまり深くのめり込んではなかったですよね。

は)本格的に聴き出したのが多分20代半ばぐらい。その時はOasis解散してたんですけど。リアム・ギャラガーが洋服のブランド「PRETTY GREEN」を立ち上げたんですよね。そこのデザインがすごい好きで、改めてOasisを聴き返して、やっとのめり込んだ。ただもう解散してるんで、「再結成しないのかな」って眺めてる感じだったんですけど、今回待望の再結成で、やったって感じですよね。

は)リアルタイムに追ってきたOasisファンという感じではなくて、完全に後追い世代にはなるかなと思いますね。

上)そうですね。20代ってことは15年前ぐらいですか。多分。

OASISの暴言について

は)またそのね、暴言がね、いいんですよ。

上)暴言、口が悪いみたいな話はよく目にするけど、じゃあどんなことを言う?

は)メモってます。 まず、我々福岡出身として。「福岡は“FUCK”が入ってるから好きだ」って。(笑)ただそう言っておきながら福岡に2回来てるんですけど、2回ともリアムが途中で退場するっていう。「今日は喉の調子が悪いわ」つって、5〜6曲ぐらいで帰る。

上)リアム・ギャラガーが割と不良なんですか?

は)これどっちも不良なんよね。

上)そうなんだ。(笑)

は)リアムの方が正直というか、自分に素直で、嫌だと思ったらしない。で、ノエル・ギャラガー。お兄ちゃんでギターを弾いてる方。発言はノエルの方が過激なんですけど、ただ常識人。リアムが帰った後に代わりにノエルが全部歌う、みたいな。

上)そこはお兄ちゃんがケツふくんだ。(笑)

は)そういうのの繰り返しがあったので、おそらく解散に至ったと言われてますね。

上)自分だったら嫌だね。バンドメンバーがライブの途中帰ったら。

は)なので福岡のOasisファンは当時は大分怒ってたらしいです。「ライブ行ったのにボーカルが帰るってどういうこと?」って。

上)そのアクシデントを楽しむ感じはなさそうだね。

は)当時自分はそれを外から見てウケるって言ってたぐらいなので。

上)面白いよね。外から見ると。

は)で、暴言ですね。Oasisとよく並べられるバンドBlurのボーカルに「エイズで死ねばいい」とか。バックストリート・ボーイズは「撃ち殺されるべき」とか。あと個人的に好きなのは、インタビュアーに「もし魔法が使えたら?」って聞かれたときに「マライア・キャリーを消すね」って。

上)相当な暴言だね。(笑)それはどっち?

は)ノエルの発言ですね。ノエルで言うと「毎朝ベッドから起きて、自分がいかにすごいかショックを受ける」みたいな。そんな兄弟ですね。

上)自分にはそう言う感じなんだ。自信がすごいんだね。

上)話を聞く限り問題しかないけどね。

は)問題しかない。よく今の時代に再結成して問題がなかったな。

OASISってどんなバンド?

は)…と言ったところで、Oasisの概要ですね。どんなバンドなのか、ちょっとお伝えしたいと思います。

は)まず、イギリスのマンチェスター出身のロックバンド。活動自体は1991年から2009年まで。メンバーは、お兄ちゃんのノエルがギターかつソングライターで、曲もほぼ全部作ってる。弟のリアムがボーカル。ジャンルとしてはブリットポップってよく言われますね。

上)へぇ〜。

は)結成までの話、弟のバンド(レイン)が先にあって、そのライブを観に行ったノエルが「自分がリーダーになって曲作ってやるから入れろ」って、無理矢理入る。93年ぐらい。そこから、たまたまライブに来てたレコード会社の人に気に入られて、トントン拍子でメジャーデビュー。

上)お兄ちゃん癖強いな。そうなんだ。

は)94年にファーストアルバム『Definitely Maybe』。「Oasis聴くならまずこれ」って言われるぐらいのやつで、アルバム1枚目で一気に英国1位。翌年『(What’s the Story) Morning Glory?』で世界規模のバンドに成長。

は)その後、ネブワースで2日間で25万人を埋める。チケットは数分で完売。応募が250万件あった。チケット倍率10ですね。

上)すごいな。

は)25万人が2日で集まるって、例えばフジロック1週間分ぐらいが2日で来る、みたいな規模感。

上)すごいね。

は)この後サードアルバムは、セカンドが成功しすぎてプレッシャーがすごくて、評価が割れた。そこでメンバーが一気に入れ替わる。

上)ちょっと待って、入れ替わる前のメンバー誰がいたの?兄弟以外、何もわかってないです。

は)ギター・ベース・ドラムがいるんですけど、ぶっちゃけ影が薄い。ファースト、セカンド、サードと頑張ってきたけど、そこでみんな辞めて、4枚目以降は実力派が入ってくる。

は)例えばRIDEの人がベースで入ってたり。4枚目以降はリアムも作曲に参加したりして変化するけど、セールス的にはあんまり振るわない。停滞期に入る。なので入り口としては、基本「1枚目・2枚目を聴いとけば間違いない」。今回のライブのセットも基本その2枚から。

90年代のOASIS

は)Oasisが出てきた94年のイギリスは景気が悪くて失業者が増えてた。若い人達が不満を抱えてて、70年代っぽい空気。一方アメリカはNirvanaが出てきて、暗い音楽が流行ってた時期。94年にカート・コバーンが死んだ、その入れ替わりぐらいでOasisが出てくる。

上)時代的にはそういう感じなんだ。

は)グランジが不満を暗く歌うのに対して、Oasisはサッカー、タバコ、酒、生活そのものを歌に載せる。Oasisは労働者階級出身で、そういう生活の感覚が根っこにある。

上)そうなんだ。

は)一方でBlurは中流階級。そういう人達が「ブリットポップ」というムーブメントを打ち出して、グランジへのアンチテーゼとしてポップな音楽をやりだしたのが94年のイギリス。

上)反動で出たのは初めて知りました。

は)Oasisは「Live Forever」を出して、「自分は死にたくない、永遠に生き続ける」っていうメッセージでヒットする、みたいな話もある。

上)なんでそんな前向きなのに薬とか酒とかでボロボロなの。

は)ダウナーじゃなくて、アッパーに行くんでしょうね。

上)日常が絶望すぎて、酒とかでむしろハイになるみたいな。

は)そうかもしれないですね。

は)余談だけど、ブリットポップが盛り上がった時に、イギリス政府が「Cool Britannia」を打ち出す。それを打ち出した途端、ブリットポップが収束して、アメリカのヒップホップの時代に入っていく。

上)そうなんだ。

は)最後のロックンロール、みたいな感じですかね。

は)イギリスもスターを求めてたんでしょうね。

上)国内は停滞してたんでしょうね。労働者階級からバーンと出てきたのは希望だったんですかね。

は)労働者階級にはすごい人気らしい。今でも国歌みたいに歌われたりするし。

上)有名になってから知ってるから、中流のいいとこの人達が集まってる印象だったけど、違うんだね。

は)結構苦労人というか…ただのヤンキー。(笑)掘り下げるほど引く話が多い。

上)ただのヤンキーがOASISってウケるよね。言えない感じ?

は)普通に盗みに入ったりとか(若い頃の話)。

上)治安悪い感じだったんだね。

OASISの音楽性

は)マンチェスターは80年代に「マッドチェスター」ムーブメントがあって、クラブカルチャーのハウス/テクノとギターロックを融合させて、レイヴ文化で薬をやって踊る、みたいな背景があった。ギャラガー兄弟はそこで育ってるので、Oasisにも影響が見られる。

は)音楽的にはマッドチェスターの影響を受けつつ、メロディアスなロック。メロディーがとにかくいい。

上)それはどこから来てるの? 天然?

は)崇拝してるのがビートルズ。リアムは特にジョン・レノン。ノエルもビートルズ全般。ポール・マッカートニー的なメロディーの良さを受け継いでる、みたいなところ。

上)なるほど。

は)あとリアムの声。ロックを歌うために生まれてきたような声。メロディーと声、そのギャップが最大の魅力。

上)弟が歌う必然性があったってことだね。

は)再結成の話で言うと、ノエルはずっと「する意味がない」って言ってた。ソロでも売れてたし。リアムは兄のことをディスりつつも、Oasisをやりたい発言をしてた。兄は一人でやっていけるけど、弟は兄がいないとダメだった、みたいな構図があるのかも。

は)リアムは末っ子で、末っ子ムーブがすごい。素直さが魅力。

は)ビートルズが名曲で戦えるなら、Oasisもファースト・セカンドだけで戦える曲が6〜7曲ぐらいある。ただ歌詞は意味がないらしくて、質問されても「特に意味ない」って言う。かっこつけなのか本気なのか分からない、その飄々とした感じもいい。

は)個人的にはセカンドの方が音が厚くなってていい。そこから入るのもあり。

上)1枚目でハマれなかったから、2枚目から聴いて、また1枚目に戻る、ってやってみたい。

OASIS LIVE'25と再結成について

は)今回のライブがですね、非常によくて。

上)その話聞きたいですね。

は)東京ドームだったんですけど、ドームって音が良くないイメージがある。でもOasisはウォール・オブ・サウンド的にギターにリバーブをかけて前に出す手法なので、音が回るのが気にならない。スタジアム向きのバンドなんだな、ってはっきり感じました。

は)あと、喧嘩してた兄弟が手をつないで入場してきた。

上)そんなポップなの?

は)ライブ中もちょいちょいちょっかい出し合う様子があって、「めっちゃ仲いいやん」って。

上)仲直りして。

は)最後の退場の時も、リアムがノエルにハグを促して、ノエルはギター弾きながら「お前が来い」みたいな。結局リアムから行ってハグする。ちゃんと仲直りしてるって。ファンにとっては嬉しい瞬間でしたね。

上)ファンとしては兄弟が仲悪いのは嫌だったんですか?

は)それも楽しんでたんですけど。でもライブが発表されてから「ちゃんと日本に来るのか」不安だった。途中で帰る人たちだから。いつまた解散するかも分からないけど、見たら大丈夫そうだな、って感じましたね。

上)再結成って期間限定じゃなくて、普通に再結成?

は)まだ何も公表してない。ただリアムが最後のMCで「日本はすごい好きな場所だよ」「これまで聞いてくれてありがとう」みたいに言って、「自分たちがいかに愚かだったか分かってるし、こんなことすべきじゃなかった。言ってる意味は分かるよな」っていうニュアンスのことを言ってた。そこを考えると解散する気はないのかな、と。

上)なるほどね。一つのバンドってドラマですね。

は)そうですね。Oasisはドラマ性が強い。映画化もされてるし。

は)結成して一気にトップになって、薬に溺れて、微妙になって解散して。兄は先にソロで返り咲いたけど、弟はくすぶってて、やっと弟もソロで良い曲出して返り咲いて、第2ステージが始まったところで再結成、という流れ。個人的にはソロも好きなので、ソロでもやってほしいなと思う。

まとめ

は)洋楽聴いてみたい人は、最初にOasisかレッチリか、みたいな感じで紹介されると思う。ぜひ今回のライブのセットリストをApple Musicなどで聴いてみていただければ。

上)ストリーミングで全部聴けるからこそ、「何を聴けばいい?」ってなる。曲単位だとランキングっぽいけど、作品で聴きたいときに、どのアルバムを聴けばいいか迷う。「1枚目にいけば間違いない」って言ってもらえると、アルバム単位でも聴ける気がしました。

は)もし今回のセットリストで聴こうって人がいたら、前半は人気のロックナンバー、後半は名曲バラードの畳み掛け。そこ意識したらいいかもしれない。特にアンコール4曲は、映画のエンドロールで流れるような曲がどんどん来る。

上)味付け濃いね。

は)濃いですね。お腹いっぱいになります。

上)ちょっと聴いてみます。

は)…すごいバンドですよ。

上)高校生の時はピンと来なかったけど、今聴いたら分かるかもね。

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